そして、リンツへ。

昨年のアルス・エレクトロニカは酷かった。展示もコンサートも、子供騙しに過ぎないようなものばかりであった。今年の展示はというと、コンセプチュアルな展示がある一方で、良くも悪くも芸術とは関係のないインターフェースデザインのようなものも多い。石井裕氏が参加していた講演会も聴講してみたが、彼が熱く語った彼の作品群はどれもコンピュータを使用したおもちゃであって、芸術だとは思えない。現在、メディア・アートはインターフェースデザインと芸術を同じ枠で括ってしまっている。しかし、それらは本来全く異なる文脈にあることを認識しておかなくてはならない。既にアルスは芸術の文脈から逸れてる。今後、インターフェースデザインと芸術を識別した上で両者をどう展示するかが重要になってくると思われる。
プログラムの一つであるカールステン・ニコライのコンサートは半端無く良かった。彼には芸術家としての認識があるのかどうか不明だが、このアルスの中で一番純度の高いメディア・アートを見た気がする。池田亮司の作品からは飾りを多く付けすぎたような誤摩化しの空気を感じたが、カールステン・ニコライのミニマルなパフォーマンスにはそういったイヤらしさのない、心地良さだけがあったのである。
そんな具合で、コンサートの興奮が覚めないままベルリン行きの飛行機に搭乗したところ、なんとカールステン・ニコライと同じ便だったのでした。
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