

濃州堂から取り寄せた居合刀です。2尺4寸の刀身に湾れの刃紋、柄の下地の鮫皮は黒に染めて頂きました。鞘は茶ヒビワレです。
私個人の美術的見地から言えば、刀ほど完成された美は他にはない。どんな彫刻家やデザイナーがその生涯をかけても、これを越える事はできない。ブランクーシが刀を見れば何と言っただろう。長きに渡るこの洗練こそが文化なのである。
そして、三種の神器に草薙(くさなぎ)の剣があるように、刀は神聖なものであり神と共にある。居合いでは神座への礼の他に刀礼も行う。
もちろん、刀が洗練されているのはその容姿だけではない。鑪(たたら)製鉄のような製鉄の技術然り、刀鍛冶の技術然り、全てがその極みに達している。刀の焼き入れは熱することと冷やすことが合わさっているのだが、急激な温度変化を受けた刀は硬く、切れやすいが折れやすい刀になる。そして時間をかけた焼き入れの刀は柔らかく粘りのある刀になる。ある刀工は切れやすく且つ折れにくい刀を作るためにその二つの原理を合わせた。焼き入れの際に、刀の刃の部分には薄く、それ以外には厚く土を盛るのである。そうすることで刃は急激な温度変化によって切れやすく、それ以外の部分は粘りがあって折れにくくなる。この焼き入れの温度の違いに寄ってできるのが刃紋である。
もちろん、この居合い刀は模造刀であるが、私はこれを神聖なものとして、まさにに“真剣”に向き合っていこうと思う。
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