5年に一度、カッセルで開催されるアートの祭典”ドキュメンタ”に行ってきました。前回来た時はTheaster Gatesの音楽と居住空間、コミュニティーを扱った作品や、今や大スターのTino Segalの誰がパフォーマーで誰が観客か分からない状況での衝撃的なパフォーマンスが印象的だったので、今回も勿論楽しみにしていました。
今回のメインの作品とも言える Marta Minujín の"The Parthenon of Books"。これまでに検閲を受けてきた本を集めて、パルテノン神殿を作るというプロジェクト。実際近づいてみると、検閲を受けてなさそうな同じ新書もいっぱい。
船の断片は Guillermo Galindo の難民船の残骸を楽器にした作品。
しかし、今回は楽譜や書類、記録写真などの資料的展示が多く、期待していたのとは違う、これじゃない感が。主にユダヤ人や移民問題、人種問題を扱った作品が多かったのですが、ディレクターのAdam Szymczykはポーランド出身で、ユダヤ人迫害をテーマにした作品をドイツで展示させるという行為は韓国が慰安婦を、中国が南京大虐殺をテーマにした作品を日本で展示するようなもので、ドイツの歴史に向き合う姿勢と許容力はやはり凄いと思います。
それでもずっと資料的なものを見せられると疲れてきますが、Terre Thaemlitzの映像作品『Lovebomb / Ai No Bakudan』は衝撃的でした。鉄腕アトムが崩れ落ちて、立ち上がる5秒くらいのモノクロ映像をひたすらループ再生しながら、被爆者のインタビューからサンプリングされた「わかりました」という声がしつこいくらいに繰り返される。その後も黒人迫害や同性愛に関する映像が低音の地響きとともに再生される。自分で撮影したものではなく、ドラマチックな映像や音楽や言葉を集めてミックスするという手法はずるいのではないかとも思うが、それでも感動してします。実は彼が同性愛者のDJであるということも分かって納得。