久しぶりの投稿になりました。3月下旬になんとか日本からベルリンへ戻りました。当時、ヨーロッパのコロナによる状況が非常に悪かったため、日本に残った方が良いと何人かから言われましたが、結果的には制作環境のあるベルリン、そして何より政府によるアーティストへの迅速で手厚い援助が受けられたことで、引き続き制作に集中して取り組むことが出来ました。この状況の違いはアーティストに限らず、非常に大きいものです。この違いはこの数年先、数十年先にもっと大きくなるでしょう。一方、2005年から私の作品を客室に常設して頂いていた京都のホテルは今回の危機に耐えることが出来ず、閉館となりました。各アーティストが各客室に作品を常設展示していくという面白い企画をしたVoice Galleryで、それらの作品やドキュメントが展示されます。
"art in transit:THE FINAL"2020年8月15日(土)~20日(木)13~19時
http://www.voicegallery.org/exhibition_event.php---
今年6月、コロナ禍の打撃を受け、京都市内のあるホテルが廃業しました。客室120室のうち半数の60室それぞれが、京都ゆかりのアーティスト60人の作品を展示していました。作品は、当ギャラリーが2001年~2006年の間に企画・運営した"art in transit"というプロジェクトを通じてコレクションされていました。そして、2020年、ホテル閉館に際して作品は当ギャラリーに託され、アーティストの元へ返すことになりました。
このたび、ホテルの最後の日まで展示されていた作品の中から約20点を展示し、特別展"art in transit:THE FINAL”を開催します。
2001年から5年間、計10回にわたった"art in transit"では、アーティストたちにホテルの日常を経験してもらうため、6名が2日間ずつホテルに滞在し、近隣を散策したり他の宿泊者と交流しました。館内の交流スペースも、アーティストの手に成る空間でした。アーティストたちは、滞在体験に基づいて制作し、作品を客室に残しました。また、アーティスト滞在の後、2日間、以降は宿泊者しか鑑賞できない作品を一般に公開しました。(実際のところ、閉館までの間、客室の作品は、それぞれのべ約1万人の国内外の旅行者が鑑賞しました。)多くのアーティストが客室を特別にインスタレーションした、当時の記録写真もあわせてご紹介します。
本展の目的のひとつは、これまで旅行者の記憶だけにとどまっていた作品との再会ですが、もうひとつは、"art in transit "の頃の寛容な時代を振り返り、2020年になって、世の中が突然失なったもの、その代わりに得たものを確かめながら、次の時代へ進む準備とするためです。
本展の展示作品には、10数年間から20年間を経た変化が見られます。それは、旅行者との時間や、季節の推移を象徴しています。が、当時のアーティストの熱気はいまだに鮮やかで、作品の随所にホテルという居住空間に展示するための技術や工夫が残っています。中には、今となっては、活動初期の記念すべき一歩となった作品もあります。かつてご覧になった方にも、初めてご覧になる方にも、当時の活気をお伝えできるかと思います。
後日オンラインでもご披露もします。(松尾惠)